交通事故の被害者は通勤費を加害者に請求できるのか

交通事故に遭ってしまって怪我を負ったものの、仕事をすることはできるので病院に行きながら会社で働いていたというケースはよくあります。ただ、そのときに通常に比べるとかなり大きな通勤費がかかってしまうことも珍しくありません。

その交通費は被害者が自腹で払わなければならないのでしょうか。加害者への請求が可能かどうかを理解しておきましょう。

交通事故に遭った時に被害者も書く供述調書とは

まずは大原則を知っておこう

加害者に対してどのようなお金を請求できるのかをまずは理解しておくことが重要です。交通事故による被害に遭ったときに示談交渉をして請求できるのは積極損害、休業損害、慰謝料、逸失利益の四種類というのが大原則になっています。

この中で交通事故による影響で被害者が出費を余儀なくされたものが積極損害と呼ばれているもので、通勤費も交通事故と法的な因果関係があることを示せれば請求可能です。

法的な因果関係というと難しいイメージを持ってしまいがちですが、示談の際に弁護士に相談すればきちんと書類を整えてくれるので心配はありません。客観的に考えて確かに交通事故が原因だとわかれば請求可能だと考えると良いでしょう。

典型例を見て確認しよう

通勤費を請求できる典型例についていくつか見てみるとイメージも湧きやすくなります。重要なのは交通事故以前はどういう通勤方法を取っていて、交通事故により別の通勤方法に変える必要があったのかということが明確であることと、選んだ方法が適切であることです。

四つのケースを確認してみると概ねどういう形で発生した通勤費であれば請求できるのかがわかるでしょう。一つ目の例として、車通勤をしていたケースを考えてみましょう。交通事故で腕や足を骨折してしまって車の運転ができなくなってしまったので通勤手段を変更したという場合にはそのために必要になった通勤費を請求することが可能です。

腕の骨折であれば歩くことはできると判断されるため、バスや電車で通勤したとすると、切符などを購入するために支払った金額を全て請求することができます。二つ目のケースとして自転車通勤をしていた人が交通事故に遭った場合を考えてみましょう。

骨折で自転車に乗れない場合だけでなく、むち打ち症で運転するのに危険を伴うといった場合にも通勤手段を変更する十分な理由になります。

バス通勤や電車通勤の他、車であれば運転できるという状況なら車通勤にかかった費用を請求することが可能です。三つ目に挙げられるのがバスや電車を使っていた人が交通事故の被害に遭ったケースです。足を骨折したり、腰骨を折ってしまったりしたときなどには歩くのが難しくてバスや電車を使うのが困難になる場合があります。

そのようなときに家族に車で送り迎えをしてもらうなどの手段で仕事に行った場合にかかった費用も請求することができるのが一般的です。四つ目の例としては徒歩通勤をしていたケースが挙げられます。交通事故による怪我で歩くのが難しくなったり、歩く距離が長くて困難を伴うようになったりした場合には他の交通手段を使って通勤することがあります。

この場合にも車やバス、電車などであれば通勤可能という根拠がはっきりとしていれば費用を請求できるのが基本です。

タクシー通勤でも全額請求できるのか

交通手段としてタクシーを使っても良いのかというのが疑問になる場合もあるでしょう。タクシー代を通勤費として請求しても問題ないのなら全部タクシーで通勤するようにしたいと考えるかもしれません。ただ、タクシー通勤をしたときには妥当性が示されないと全額を支払ってもらえないこともあるので注意しましょう。

例えば、腕を骨折してしまったから車通勤をやめてタクシーで通勤したというケースが考えられます。この場合にはバスや電車による通勤が可能であれば、通勤の一般的な方法としてタクシーよりもバスや電車を選ぶのが会社の規則から考えても適切なのでタクシーを使ったのは妥当ではないと判断されるのが普通です。

しかし、バスの停留所や電車の駅が勤務先の近くになくて車通勤が原則になっている場合もあるでしょう。このときには他の手段が有効ではないのでタクシーで通勤せざるを得なかったと判断されてタクシー料金を払ってもらえるのが通例です。

一方、片足と片腕を骨折してしまったというようにかなり重傷でありながらも仕事をするという場合には、通勤手段としてバスや電車を選べたとしても本人の負担がかなり大きいという考え方で加害者が負担するのが妥当と考えられることもあります。

怪我の大きさなどが問題になるとケースバイケースで考えなければならないので弁護士に相談して判断するのが賢明です。基本的にはやむを得ないときの交通手段として使ったときにはタクシー料金も請求できると考えましょう。

どの程度まで請求できるのかも知っておこう

これまで通勤費として請求できるかどうかについての話をしてきましたが、具体的にどんな料金であるかについてはあまり触れていませんでした。バスや電車の場合には利用料金を実費請求すれば良いというのは明らかでしょう。

タクシーを使った場合にも領収書を残しておいてその金額通りに請求するというのが基本です。しかし、車通勤をした場合などにはどの程度まで請求できるのかが疑問になってしまいがちです。車通勤の場合には会社が負担するのと同じような考え方が適用されます。

自宅と職場の往復に必要なガソリン代に加え、有料道路を使う場合にはその料金も請求可能です。また、会社に駐車場がなくて近くのコインパーキングを利用したという場合には駐車場代も請求することができます。一方、自分では運転できないけれど家族に運転してもらった、親戚に来てもらって職場まで送り迎えをしてもらったという場合もあるでしょう。

そのときにもガソリン代などの一通りの料金をまとめて請求できますが、親戚が自宅に来るのにかかった費用についても妥当なものであれば請求可能です。電車やバスで来てもらったらその料金を払ってもらえると考えましょう。

請求のタイミングはいつか

通勤費はいつ請求できるのかと疑問に思う人もいるでしょう。都度払いをしてもらうことはできず、示談のタイミングで請求することになるので当面は立て替えなければなりません。怪我の治療が完了して交通事故による損害内容が確定してから示談が行われるので、それまではとりあえず自分で負担することになると覚えておきましょう。